J-POP/アニソンはそもそもDJする用には作られていないので、J-POP/アニソンを使ってDJをするとき、曲のつなぎについては悩みの多いポイントかと思います。
特に初心者の方は疑問も多いかと思いますので、つなぎについて自分が普段意識しているポイントをまとめていくので参考になれば嬉しいです。
※あくまで自分の経験・感覚・スタンスに基づいて良いと思った考え方・方法の紹介です。この内容が正しいとか、これができていないとダメだとかいうつもりはないです。
「選曲」と「ミックス(曲を違和感なく混ぜる)」というふたつの観点で気を付けていることを紹介していこうかと思いますが、この記事ではまず「選曲」の観点について記載します。
曲を選ぶときに気を付けること
実際に曲をつなぐ前にそもそも次にかける曲を選ぶ時に注意する点について書いていきます。
気持ちよくつながらない曲同士はどうあがいても綺麗につながらないというのが自分の考えです。
基本的には選曲のミスをつなぎの技術でカバーするのは難しいので、つなぐときのノウハウの前に次にかけても問題ない曲を選ぶというのも重要なポイントになります。
「楽器」「リズム」「キー」の順番で考える
具体的にどういう指針で曲を選ぶかですか、自分の中では「楽器」「リズム」「キー」の優先度で考えています。
曲と曲をつなぐということを考えたときに、音楽の要素で着目すべきなのが「楽器」「リズム」「キー」の三つの要素だと思っていて、それぞれ以下のような役割を果たすと考えています。
- 楽器 → 曲の全体の大まかな雰囲気を作る。
- リズム → グルーブ感が生まれる。
- キー → 相性がいい曲同士は聞き心地が良くなる。
上記の中で「楽器」「リズム」「キー」の順で考えるのは、つないだときに目立つ度合いがその順番で大きいと思うからです。
図形で例えると「楽器」は色で「リズム」は形で「音程」は模様のようなイメージです。形や模様がバラバラでも色が同じなら一定の統一感は出るけど、色がバラバラなのは凄く目立つ、というような具合です。

J-POP/アニソンだとジャンル横断することも多いと思うんですが、そのときも楽器の類似性に注意して選曲するとうまくいったりします。ピアノの音を含む生音系のハウス曲からピアノの音が印象的なEDMへと変えて行ったりとかです。
「キー」は気にしなくていいわけじゃない
「キー」の話はもう1段上のレベルを目指すなら、みたいな扱いされることが多い印象なんですけど、個人的にはもっとちゃんと気にすべきだと思います。
さきほどの優先度の順番では一番下にはなりますが、それは相対的な話で「キー」も十分重要なポイントだと考えてます。
というのも「キー」の相性の良さが加わったときの気持ちよさこそ曲と曲をつなぐということの醍醐味だと思っているからです。
自分はこの快感を味わうためにいろいろつなぎについて試行錯誤しているといっても過言ではないです。ぜひこだわる人が増えてほしいです。
BPMは±2%くらいは次の曲の候補として考えていい
次にかける曲を探すとき、BPMについては前曲の±2%くらいまでは候補として考えていいと思っています。
BPMを少し上げ下げしてBPMを揃えてミックス、といったことはJ-POP/アニソンに限らずよくあることかと思いますが、J-POP/アニソンはBPMを変えたときの違和感が特に大きいジャンルでもあると思います。
よく言われる音質の劣化の話もそうなのですが、一曲一曲の認知度が高いJ-POP/アニソンにおいてはそれ以上に普段聞いている速さと大きく違うと不自然な感じをかなり受けます。好きな曲ほどよく聞きこんでいるので、その不自然さはより大きくなります。
じゃあどれくらいまでなら元のBPMから変えてよいかって話になるんですけど、自分の感覚としては以下になります。
| 元のBPMからの変更幅 | 不自然さ・違和感 |
|---|---|
| ±1% | ほとんどなく注意して聞けば分かるレベル |
| ±2% | 少し早い/遅いと感じはするが許容範囲なことも多い |
| それ以上 | 明らかに早い/遅いのが分かり聞き心地が悪い |
ポイントとしては変更幅が割合(%)となっている点で、変更幅はBPMが低いほど小さく、高いほど大きくなります。
±2%のところの”許容範囲なことも多い”はそれまでのDJプレイの流れがある前提で許容できることもあるといった意味合いです。かなりノリノリなコアタイム時にBPM高めに変更してもノリとテンションで違和感は薄れる、といった具合です。
上記のようにBPM±2%くらいまでの曲は選ぶことが多いので候補としていいと考えています。
上記をBPM帯ごとに具体的な数値に落とし込んでみると以下かなあという感じです。
| BPM帯 | ほぼ違和感ない範囲 | 許容できる範囲 |
|---|---|---|
| ~100 | ±3 | ±5 |
| 100~130 | ±1 | ±2 |
| 130~150 | ±2 | – |
| 150~190 | ±2 | ±3 |
| 190~ | ±3 | – |
1行目からさっきと言ってること違うじゃんって感じなんですけど、BPM100未満についてはそもそもグルーブ感があまり感じられないことが多いので逆に大幅に変えてもそんなに違和感を感じない気がします。それ以降のBPM帯については一個前の表のとおり±1%~±2%に収まるイメージです。
上記を考えると基本的には±1までにしといてBPM高ければ±2、±3にしたりも可、ぐらいのスタンスでいるとちょうどいいと気がしています。
※あくまで上記は基本スタンスで、あえて思いっきりBPMを変えて特殊な演出をする、などの例外もあります。
男性/女性ボーカルは可能なら揃える
同じ性別のボーカル曲同士をつなぐほうがやっぱり聞き心地は良いのですが、自分の経験上ではそれで統一してDJプレイするのは難しいのでこれはできそうなら揃えるくらいの気持ちでいいと思います。
曲の文脈・背景情報を優先しない
最後に、これは完全に自分の価値観・スタイルによるところが大きいので合わない人は無視してくれてもいいのですが、曲の文脈・背景情報を優先しない方がいいと思っています。
文脈・背景情報というのは、ここでは同じアーティストであるとか、アニソンであればシリーズだったりキャラだったり声優だったりまたはアニメ本編でのその曲の意味合いとか、そういう曲の音楽的な要素以外、といった意味で使用しています。
これらを取り入れない方が良いと言っているわけでは決してないです。
アニソンなんかは特に曲自体の持つ意味合いが強いので、うまく活用すればオタク特有のクソデカ感情に訴える通なDJプレイができますし有効活用すべきです。自分もよくやります(できてるかは置いといて)。
ただこれを選曲のメインの考え方にするのは良くないのではということです。
理由としてはそういうDJプレイは音楽的な心地よさと面白みがどんどん損なわれると思っているからです。その行きつく先が人気の曲・好きな曲がかかるかどうかだけの現場、みたいな感じになるのではと想像しています。
あくまで今まで説明してきたような音楽的に心地よくつながる土台があって、そのうえに可能ならプラスするものだと考えています。
※こちらも、音楽的な要素はいったん置いといて特別な演出を入れたい、とか例外はもちろんあります。
実践的なはなし
理論的な話をしてきましたが、じゃあ実際その選曲ってどうやるの?って点について自分のよくやるやり方を紹介したいと思います。
※自分がrekordbox利用者なのでその前提の記載になっています。
トラックフィルターを活用
「楽器」「リズム」「キー」「BPM」の話をしてきましたが、これらを考慮した選曲の仕方として「トラックフィルター」を自分は活用しています。
下の画像のオレンジ枠が「トラックフィルター」になります。右上あたりのオレンジ矢印が指しているアイコンを押すと表示されます。トラックフィルター画面内の条件を設定することで、その条件にあった曲だけコレクション内に表示されるようになります。
「キー」「BPM」についてはオレンジ枠内の左側にある三つの列で設定可能です。

オレンジ枠内の左上部のほうにある「MASTER DECK」の文字の箇所をクリックすると、再生中の曲の「BPM」「KEY」が設定されます。


ここから真ん中の列の”±2%”を選択すると、BPM±2%まで表示されるようになります。

上記の状態から「キー」の設定を前後に動かしていけば「BPM±2%」「キーの相性が良い」という曲を確認していくことができます。
(ちなみにキーの表示は自分は「Alphanumeric」表示にしています。この形式の方が相性の良いキーは数字が前後するかA/Bかの違いだけ気にすればいいので、音楽知識の無い身としてはこちらの方が断然わかりやすいです。そもそものキーの相性については詳しく説明してくれているサイトがあるのでぜひ調べてみてください)
「楽器」についてはマイタグでのフィルター(下画像のオレンジ枠)を利用しています。

上記のようなマイタグで大まかな楽器の構成で分類できるようにタグ付けをしているので、このタグを選択することでさらに「楽器」が近い曲を絞り込めます。
(上記のマイタグの詳細はこちらの記事で紹介しています。)
※ただ、上記のタグについてはタグ付けがまだできていない部分が多く、今のところ実態としてはさきほど書いた通り「キー」の設定を動かしながら曲を探しつつ「楽器」にも注意を払う、というようなやり方をしています。
次にかける曲として妥当か実際に聞いて判断する
コレクション画面で候補となりそうな曲だけにしぼれたらあとは曲を聴いてみて再生中の曲と相性が良さそうか確認し、次にかける曲として適切か判断していきます。
「BPM」「キー」「楽器」をトラックフィルターで揃えたといっても、表示された曲が全て相性が良いということはまずないです。まず「リズム」が合うかは実際に聴いてみないと分からないし、rekordboxがつける「キー」も完ぺきというわけではないので、「キー」の相性は合っているはずなのになんか合わないなという曲はよくあります。
曲を試しに聴いてみるときはコレクション画面の「プレビュー」が便利です。下画像のオレンジ枠部分になります。

曲の波形が表示されていますが、この波形をクリックするとDJコントローラに接続したヘッドフォンで曲を確認することができます。
また、ありがたいことにホットキュー設定をしているとそれも表示してくれます(上図の波形中の四角のアイコンです)。これをクリックするとホットキューを設定した位置から試聴ができます。
イントロ/ボーカル/アウトロなどにホットキューを打っておけば、曲のロードをしなくても直接イントロやボーカルだけ確認することができるようになりますし、選曲以外でも再生中の曲の間奏・アウトロどんなだったっけって確認するときにも役立ちます。
(自分が実施しているホットキュー設定についてはこちらの記事で紹介しています)
注意として候補となる曲が少なくなりやすい
普段からよっぽどBPMとかジャンルとかしぼって曲集めをしない限り、上記のやり方だと表示される曲がかなり少ない結果になると思います。その少ない曲の中から無理やり選んだとしてもなかなか良いDJプレイ・DJ-MIXにはならないです。
トラックフィルターの各種条件でしぼるのは、あくまで次にかける曲見つける負担を減らすための方法というだけで、必ずしぼった中から選ばないといけないという縛りではありません。
その条件で見つからなければ少しずつ条件を緩くしていって対象となる曲を広げっていって最適な曲を見つけるという対応が必要になります。
自分も気に入ったJ-POP/アニソン類を雑多に集めるので、はっきりいって少なくなるケースがほとんで、「キー」設定をかなりずらしたり、なんなら「キー」で絞るのをやめたりとかしょっちゅうしています。
最終的には自分の耳を信じる
ちなみにいろいろ理論的なことを言ってもなんだかんだ最後は自分の耳が頼りだと思っています。自分の耳でちゃんと聞いてみて、次にこの曲かけると楽しくなりそう!って感覚を信じるべきだと思います。
その感覚を研ぎ澄ますためにも、メロディがうまく調和するか、雰囲気が合うか、楽器の聴き分け、など音楽の感覚的なものを聴き取る力みたいなものがDJには必要な能力だと考えているので、試行錯誤してしっかり耳を鍛えた方が良いと思います。(自分も頑張ります)
おわりに
J-POP/アニソン同士をつなぐ難しさというのは、1曲1曲の個性が強くてBPM、曲の構成、各パートの長さ、楽器などがバラバラで無限のパタンがあるという特徴から来ていると思います(そこが魅力ですが)。
J-POP/アニソンDJというのは、そういったそもそもDJプレイに向いてない楽曲を無理やり使ってDJプレイとして成り立たせる所業なわけなので、J-POP/アニソンDJこそ選曲には真剣に取り組むべきだと自分は考えています。
みなさんが選曲に向き合う時にこの記事で書いた内容が少しでも役に立ってくれればうれしいです。

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